仕事も結婚生活も!女性のキャリアについて考える『第5回 楽しんで働いている女性にインタビュー 決断は行動しながら。NPO法人の代表を務める鎌田 華乃子さん』

女性のキャリア、働き方

仕事も結婚生活も!女性のキャリアについて考えるシリーズ、第5回は、楽しんで働いている女性にインタビュー ~ 決断は行動しながら。NPO法人の代表を務める鎌田 華乃子さん ~ をお届けします。

 

今回インタビューを受けてくださったのは、NPO法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパンの代表理事を務める鎌田華乃子さんです。

 

キャリア2月

 

「コミュニティ・オーガナイジング」という言葉を初めて聞く方が多いと思いますのでご説明しますと、「コミュニティ・オーガナイジング」は、「みんなの力を集結して、大きな課題を解決することができる状態をつくる手法」です。華乃子さんは、アメリカで学んだこの手法を日本でも広めるべく、全国でワークショップを開催しています。

「人々の能力を伸ばして、力を集結し社会を変える」という考え方に基づいているため、首長などトップが変わったために今まで作り上げてきたものが別のものに変わってしまうといったことが起こりにくく、コミュニティの根っこを強化することができるのです。オバマ氏陣営が大統領選の地上戦で用いたことでも知られている手法です。

お仲間と独自の組織を立ち上げた彼女ですが、スタートは会社員。
現在の仕事に携わるまでには、行動しながら考え、自分が出した答えに忠実に生きてきた「これまで」がありました。人生の途中では、結婚観が変わる別れも経験。

多くの女性が自分のキャリアについて考えるとき、仕事と切り離して考えにくいのが恋愛や結婚に関すること。今回は結婚に関するお話も伺っています。

それでは、華乃子さんのお仕事に関する「現在」「過去」「未来」とプライベートについてのお話をご覧ください。

現在


人に会うことが多い1週間

1週間のスケジュールはミーティングが中心。人にお会いすることで次のアクションが決まったり、人と人を繋いだりするため、人に会っている時間が多いそうです。ワークショップの頻度は月に0~2回で、東京ではワークショップを主催し、地方では現地のNPO法人が主催・広報を行い、華乃子さんが代表を務める法人は協力組織という位置づけで開催しています。

 

OFFが自分に幅をもたらす

「仕事ばかりしていると疲労などで気持ちがすり減ってしまうことがありますが、仕事をしない時間をきちんとつくって、その時間を充実させることが自分に幅をもたらしてくれますし、エネルギー源にもなります。」(華乃子さん)

今、アンテナを張っている分野は、現代アート。
女性のエンパワーメントを社会に発信する時に、正面を切って「こうしましょう!」と伝えるよりも、かっこよく素敵に見える何かを通して発信した方が身近に感じてもらえたり心に届いたりしやすいので、芸術に触れることでアンテナを磨いているのだそうです。

 

過去


では、これまではどのような想いで過ごしてきたのでしょうか。学生時代から遡ってお話を伺いました。

 

学生時代に想い描いていた夢は、今の仕事とは違った

初めから今の仕事が視野に入っていたわけではなかった華乃子さん。
中学生の頃に想い描いていた未来は、環境保護の仕事に携わる自分の姿でした。

夢が見つかるのが早かったのには、理由があります。
6歳から住んでいた横浜で、開発のために遊び場だった山や野原がなくなっていく過程を目にしていました。
そんなある時、お父様からもらった本を通して、世界ではもっと大規模に環境が破壊されていることを知ります。
そこで、「大人になったら環境を守る仕事がしたい」と思うようになり、大学では環境についての学びを深めました。

そして迎えた就職活動。当時は、環境に関する仕事の募集案件は少なく、環境保護を実現できる仕事が具体的に何なのか、華乃子さんにはよくわかりませんでした。その上、時代は就職氷河期。就職するだけでも大変です。
そんな中、複数いただいた内定の中から選んだのは、専門性が活かせて英語も話せるようになりそうな、スイスの化学系商社。環境保護との関わりは間接的にはなるものの、大学で学んだ知識を活かすことができる仕事でした。

それでも、4年間の在籍の中で、忘れかけていた「環境保護に関わる仕事がしたい」という想いは次第に強くなっていきました。
「営業職として結果を出すことができても、世の中は変わらないし、自分の代わりは他にいくらでもいるのではないか」と考えるようになった華乃子さん。初めての新卒女性営業職としての入社だったため、退職に後ろめたさはあったものの、「自分の人生なのだから」と想い直し、転職を決意しました。

次の会社での仕事は、環境に関するコンサルティングです。
クライアントは、大手企業や業界のリーディングカンパニー。
しかし、これらの企業からは、既存の状態を維持するための調査やリスク回避のための調査依頼が多く、新しいことを行う提案や何かを変えるための提案はなかなか受け入れてもらうことができませんでした。
クライアント側の状況を頭では理解しつつも、この仕事は世の中を本質的に良くしていくものではないと感じるようになっていきました。

 

結婚を考えていた彼との別れ。これを機に、人生について改めて考えた。

この頃、プライベートでは、結婚を考えていた彼との別れも経験していました。
別れた後に、「結婚によって自分を幸せにしたい」「彼に幸せにしてもらいたい」と考えていた自分に気づいた華乃子さん。自分を幸せにできるのは自分自身なのに、人に幸せにしてもらおうという考え方が良くないのではないかと思い直します。

図らずも自分の今後の人生について改めて考えることになった彼女は、美容院の経営をしていて輝いている叔母様のことを思い浮かべていました
叔母の生き方に憧れる自分と、社会人生活を通して感じてきた「自分の意見が言いにくい日本社会を本質的に良くしていきたい」という想い。この想いを突き詰めて改めて考えてみると、「環境問題」も政府や企業の言い分が優先され、普通の人の意見が尊重されないために解決されないことに気づきました。必要なのは「環境保護」ではなく、「個人の意見が通る状態をつくること」なのだと思い、公共政策を学ぶことができる大学院への進学を考えはじめました。

「日本では難しいのですが、アメリカやヨーロッパではNPO法人の提案が通ることが多く、企業もそれに協力的です。これらの国々は、NPO法人に在籍している市民の数が多いため、NPOにも発言力があり、民意が反映されやすいのです。」(華乃子さん)

また、大学院への進学は、高校・大学へ推薦で入学し、チャレンジして自らの力で合格を勝ち取った経験がないというコンプレックスを乗り越えるチャンスでもありました。

― 留学して大学院へ行こう!―  華乃子さんの心は決まりました。

 

大学院でコミュニティ・オーガナイジングに出会う

「市民参加について学びたい」と言う華乃子さんに、周りのみんなが進めた授業が、コミュニティ・オーガナイジングでした。当初は猜疑心も持っていたそうですが、小さいながらも実際にプロジェクトを経験し、人がより良い方向に変化していくのを目の当たりにして、次第にこの手法に魅力を感じるようになっていきました。

日本では公のことを考える場があまりありませんが、日本人はもともと公共心を持っているし、この手法を日本に持って行ったら根付くのではないか、そんな想いも芽生えていました。

でも、この時にはまだ、帰国後具体的に何をするかは決まっていませんでした。

 

大学院卒業後は、ニューヨークでコミュニティ・オーガナイザーの見習いのような仕事を1年ほど経験しましたが、その間に日本で既にコミュニティ・オーガナイジングを広めたいという熱い想いを持つ方と話をすることができました。
二人は、東京でワークショップを開催しようと計画します。
お互いの知り合いのサポートを得て1回目のワークショップを終了した後、「これっきりで終わりにするのはもったいない」という話になり、2014年1月にコミュニティ・オーガナイジング・ジャパンが誕生しました。

未来


今後は、頑張る人が応援されるような文化を作っていきたい

「日本では、‘市民活動’というと‘鉢巻’や‘のぼり’といったイメージを持たれてしまい、あまり身近に感じてもらえないのですが、アメリカでは市民運動を頑張る人が応援されるような文化が根付いていて驚きました。」(華乃子さん)

2012年にオバマ氏の大統領選でボランティアを行った時には、一般の方から「あなたの活動には意義があるから、応援してる!」と声をかけていただく機会も多かったのだそうです。「日本でも、市民が社会を変えられるという感覚を当たり前で身近なものにしていけたら」と話してくれました。

 

目指すは、自分や周囲の人に対して正直な人生

どんな人生にしたいか伺ったところ、「その時その時の自分に正直な人生にしたい」「周囲の人に対しても正直でいたい」と華乃子さん。

「私自身も世の中も日々変わっていくので、5年後・10年後にどうしたいのかは先のことすぎてわかりません。でも、方向性や1年後にどうしたいのかはわかります。」(華乃子さん)

 

 

プライベート


将来は結婚して家庭をつくりたい

「昔は男性に頼ってしまっている自分がいたけれど、今後は、経済的にも精神的にも男性に依存しないようにしたいです。相手の人生に合わせて自分の人生を変える・合わせるというよりも、それぞれが自分の道をきちんと歩み、お互いがお互いのパートナーとして、一緒にいることができたら良いと思っています。

そして、相手から求められていないことはしないようにしたいです。

性格的に、勝手に気を利かせて色々やってしまうところがあるのですが、それに気づいてもらえないと疲弊しますし、相手の方がそれを望むとは限らないので、事前に話し合って決めるようにしたいです。」(華乃子さん)

 

取材を終えて


「日本にいると、『男性が一家の大黒柱』っていう結婚観をいつの間にかみんなが持ってしまっている気がするね」と話した同年代の私たち。華乃子さんも私も、いつの間にか持っていたこの結婚観について「これで良いのだろうか」と立ち止まり、自立へと気持ちが変化していった経験をしていたため、とても共感しながらお話を伺ってきました。

恋愛観や結婚観が、経済的自立・精神的自立をベースにしたものに変わると、仕事観や人生観も変わります。
だから、新しい価値観に沿って動き始めると、人生には新たな展開が待っていたりする。

華乃子さんがこれまでに仕事や恋愛を通して経験してきた一つひとつのエピソードを深く伺っていったら、それぞれについて1冊ずつ本が書けそうな気がしますが、きっと、彼女はこれからも、そんな内容の詰まった人生を、穏やかに、しなやかに歩んでいくのでしょう。

「本が書けそうな話」は、まだまだこれからもたくさん出てきそうです。

 


鎌田 華乃子さんプロフィール

■ 現在の仕事・活動

特定非営利活動法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン 代表理事
米国留学時代に学んだコミュニティ・オーガナイジングの手法を日本に広めるため、ワークショップ、実践コーチングや講演会を行っている

■ 職歴

1社目  外資系商社 営業 
化学品の輸出入、新規化学物質登録に従事 (4年間)

2社目  外資系コンサルティング会社 シニアコンサルタント
環境法令調査・新規化学物質登録・環境デューディリジェンス・遵法監査に関するコンサルティング、新規ビジネス開拓に従事 (7年半)

留学   ハーバード・ケネディスクール(ハーバード大学の公共政策大学院) 行政学修士プログラムを修了

現在   「現在の仕事・活動」欄参照