青春書道漫画「とめはねっ!」14巻(最終回)の感想レビュー(※後半ネタバレあり)
河合先生の「とめはねっ!」最終巻14巻を読了しました。思わず、スタンディングオベーション!想いをチカラに変える素晴らしい漫画作品でした。
まず、「とめはねっ!」は、とある高校の書道部を舞台とした青春コメディ漫画です。書道の基本「とめる・はねる・はらう」からきっと、とっているんでしょう。素敵な作品名。
本作品のあらすじは、簡単にいうと、主人公は、帰国子女なのに、帰国子女っぽくない主人公♂と、同じ「道」系だけど柔道大会で全国二位の女子の2人が書道部に関わっていくお話です。
案の定、サークルとしては地味な書道部。そこに藍?一点の主人公が入りますが、一見、草食系の見た目の主人公(大江 縁)はよくあるモテモテ展開にはなりません。もちろん、ここに河合先生の漫画のクオリティの高さがあるのです!
書道ブームの火付け役!文化系青春コメディー!!
脅されて書道部に入部した大江縁と、騙されて書道部に入部した望月結希。一風変わった先輩たちに翻弄されて、これでいいのかと思う日々。でも、ダイナミックでデリケートな書の世界は、かなり魅力的で… そして彼らの「書の甲子園」を目指す日々が始まる!! 文化系青春コメディー、It’s 書(SHOW) TIME !!
ということで「とめはねっ!」14巻と全体を通しての見どころポイントを振り返ってみました。
ポイント1:「書道」に真摯に向き合った漫画
本作品には「書道」に対する敬意を常に感じることができます。そして、それが押し付けがましくなく、むしろ丁寧に丁寧に表現されています。
この河合先生、以前は「帯ぎゅ」で柔道漫画を書いていましたが、本当に丁寧で、真摯で・・・もう頭が下がります。学校の教科書になっても、文句ないクオリティ!素晴らしい!
そして、その姿勢は、書道以外にも通じることもしっかり添えて、それがさらに真摯な姿勢を感じさせてくれます。
ポイント2:青春要素がたっぷり!
青春要素、恋愛・努力・友情・勝利・・・ もう、「書の甲子園」といったような書の勝負がふんだんに盛り込まれており、柔道の試合にも劣らず、盛り上がります。これは、僕の言葉よりも、この漫画を読んだほうがいいでしょう!
ポイント3:見た目は凡庸、文化系サークルにいそうな草食系男子の主人公は、一番大事な「チカラ」をもっている
ここはあえて「チカラ」という言葉にしました。が、どういうことかというと、彼は最初から、「これ」をもっています。
それは何か。
そう、「自分で考えるチカラ」。
これは漫画でもしっかり表現されているのですが、あえて、この素晴らしさは謳っていません。でも、常にここを大事にしているということを作者の意図をもって表現されています(と思います)。
ポイント4:「最終巻」に込められた作者の想いが素晴らしい
ここからは、ちょいとネタバレになりますので、まだの方はお控えください。
1巻からずっと読んでいってのこの14巻は、ココロが揺さぶられます(要は泣いちゃいます)
「迷いながら ぶつかりながら 揺れながら 過ごした日々を いとしく思う」
主人公の縁が、望月の柔道部選年のための書道部を辞めると聞いて、伝えたかったことを形にした「書」です。
テクニックではなく、想いである。ただ、その想いを伝えるための努力は何か?そこに技術はある。ということ。どの「道」にも通じる大事なことを盛り込みつつ、この作品の完成に至ります。
これは、縁にとっては、恋愛の感情もありつつも、純粋に仲間へ贈る最大のエールになっています。これもただ、自分の気持ちを優先するのではなく、自分で考え、今一番大事なことをしっかり見つめることのできる彼だから、胸を打つ優しい書が誕生します。(と勝手に思っています)
これをみた先輩はじめ、皆ココロを打たれたのはいうまでもありません。その書のチカラを漫画で表現しきった、河合先生の漫画のチカラに脱帽です!
そして、もう一つ、そのあとの締めのエピソードです。これは、縁がこれからの自分の道を見出して生まれた文です。ここに、サプライズとして、望月に「一」を書いてもらうのがにくい!演出です。最初の話にあった身体能力が高く思い切りのよい性格の彼女には、大きな◯や一といった文字が素晴らしいのです。それをここにいれていく。もうたまらん。
ラスト回「ただ1本の線を書く」
筆をそこにトンと打つと「点」になりますよね。
それから筆を動かしてはじめて「線」になります。その「線」を組み合わせると字になります。
でも筆で書く線はいつも全く同じではありません。少しずつ違います。同じ線は二度と引けません。
だからいい字を書くために、一本一本の線をしっかりと大切に書こうと、そういう気持ちを込めて書きました!
(大江 縁)
ということで。
「縁」と「結」の物語
二人の名前ですね。もう、そういうことなんですよ。河合先生が、にくい!この二人は、どこにでもいるような男の子と、日本一の女の子の話ですが、この二人には、書道や和の心といった精神がもつチカラが備わっている二人なんです。この二人のような人間のようにときに迷いながら、ぶつかりながらも、まっすぐ生きること。青春は短い、でも、人生は続く。大事なのは、どんな道を歩んできたか。これから歩んでいくか。そんなメッセージが込められている子どもから大人まで読んで欲しい傑作です!
内容紹介
文化系青春コメディー、ついに完結!!!!
鈴里高校と鵠沼学園の合同夏合宿。 「書の甲子園」に向けての作品作りも終盤に。 皆が次々と書き上げていく中で、 ようやく何を書くか決めたユカリは、合宿最後の夜に徹夜で挑むが―― 一方、望月はこの夏合宿で書き上げた作品を最後に、 書道部を辞めて柔道部に専念することに。 しかし、彼女の本心は…… 果たして二度めの「書の甲子園」の結果は如何に!?
【編集担当からのおすすめ情報】
ユカリが「書の甲子園」の作品に何を書くのか!? 書道部を辞めることになる望月の本心は!? そして、「書の甲子園」の席上揮毫に挑むユカリは…!? と、見所ばかりの最終巻第十四巻ですが、 さらに描き下ろしの後日譚も収録!! 鈴高書道部の皆に会えるのもこれが最後。 ど素人から始めたユカリと望月の成長を、ぜひ見届けてください!
その他河合先生作品も是非おすすめします。
作者の河合克敏さん経歴
1964年生まれ、静岡県浜松市出身。 1988年『帯をギュッとね!』を「週刊少年サンデー」で連載開始。
1996年『モンキーターン』を「週刊少年サンデー」で連載開始。
1999年『モンキーターン』で第45回小学館漫画賞を受賞。
2006年『とめはねっ! 鈴里高校書道部』を「週刊ヤングサンデー」で連載開始。
2008年「週刊ヤングサンデー」休刊に伴い、現在の「週刊ビッグコミックスピリッツ」に連載の場を移す。
出典:http://spi-net.jp/weekly/comic025.html
書道パフォーマンス甲子園とは?
書道パフォーマンス甲子園(しょどう-こうしえん)は毎年愛媛県四国中央市の四国中央紙まつりに行われる学生大会である。大会の正式名称は全国高校書道パフォーマンス選手権大会。高校書道部員10人程度でチームを組み、4m×6m四方の巨大な紙の上を流行の音楽に合わせて手拍子やダンスをしながら書道をする、文字通りパフォーマンス書道日本一の高校を決める大会である。