外資系証券マンの本棚(4)(教養としてのファッション編)

ビジネス・商売

二軒茶屋です。

社会人ともなると、服装にも気をつけろとよく言われます。

「相手は君の靴の先まで見て君を判断しているんだ」、と昔上司に言われましたが、実際それは事実です。お客さんもよく見ています。

一方、会社でも中堅になってくると、少し違う見方をしてくる人と出会う機会が増えてきます。その人たちは、「君はその服を理解しているか」、「そもそもその服、ファッションの歴史を知っているか」と、言わんがごとく、やんわりと質問をしてきます。

往々にしてそういうのは、社長の一歩手前まで上り詰めていた、会社の最前線に立つ役員の方が多いように思われます。やはり賢人はただ服のセンスを磨くだけでなく、本質まで理解しようとしているのだなぁと感心してしまいます(実際彼らは服を買うと気に店員と一時間近く話し込むそうです)。

しかしこればっかりはファッション誌を読んでいてもわかりません。本質的に服・ファッションのもつ意味を理解しなければ極めて困難です。

実は最近注目されはじめており、徐々に関連の本も増えてきているように思われますが、まずは定番から、「ファッションの教養」を身につける為の本を数冊ご紹介いたします。

 

ひとはなぜ服を着るのか

「教養としてのファッション」の第一人者といったらこの人しかいません。

鷲田清一先生です。

私が初めて先生の本を読んだのは、「じぶん、この不思議な存在」という哲学の入門書で、中学一年生のときでした。その頃は哲学者だと思っていましたが、この本を読んで驚きました。しかしそれもこれも最後は繋がっているのですが、その説明は後ほどということで。

この本は、ひとがなぜ服を着るのか、そもそも我々は主体的に服を着ているのか、着させられているのか、服の機能を超えた役割、意味、即ち社会や文化というコンテクストの中での意味について、極めてわかりやすく、若者にもわかりやすいような例などを挙げながら説明されています。難読書ではなく、電車通勤中でもストレス無く読めるレベルです。

ファッションのことを何も知らない初心者の方に、入門書としてお薦めしたい一冊です。

 

ちぐはぐな身体

「ひとはなぜ服を着るのか」が少し簡単すぎるという方は、こちらから読み始めるのもいいかもしれません。

「若い人たちにわかりやすく」というテーマで、身の回りのものや、誰にでもわかるような例を挙げながら服装、ファッションというものの役割、意味を語っています。

服と身体の関係と言う意味では、単に服を着るということではなく、「自分という身体の延長として」捉えられており、非常に目からうろこでした。

少しファッションに興味がある人はこちらの方が読みやすいかもしれません。

 

モードの迷宮

鷲田清一のファッション論の極みといいますか、ついにファッション論の先に「哲学」が見え隠れする、そんな本です。

ファッションの先に身体、身体の先には「じぶんという存在」が待ち受けているわけで、彼はそこまで掘り下げて生きます。

不思議ですね。自分の上に重ねる衣服を突き詰めると、結局服の内側の自分に戻ってくるわけですから。

 そもそもファッションが表象するもの、即ちモードという通念について考察していくと、ロラン・バルトという哲学者に行き着くのですが、彼の本を読むには相当の準備運動と専門知識が必要になってきますので、とことんファッション論を突き詰めたい人は、まずこの「モードの迷宮」をゴールにすることでいかがでしょうか。

その意味では、この本を読む前に、先ほどご紹介した「じぶんこの不思議な存在」を是非読んでおくと理解が深まると思います。

 

顔の現象学

折角なので鷲田先生の本をもう一冊ご紹介します。

こちらはジャケットがとにかく美しいことでも知られていますが、「顔」というものは一体どういうものなのか。「見られること」、「認識すること」といった観点から極めてエッジのきいた分析が行われています。これも結局「じぶんという存在」の認識について考察したものと言えます。

先ほどの本よりは少し難しいですが、難解ではないので一読してみることをオススメします。

 

スカートの下の劇場

日本のフェミニストの急先鋒、上野千鶴子先生の書籍です。極めて有名な本ですが、下着にフォーカスして社会学的な見地を踏まえて持論が展開されています。

なるほどと納得する部分もありますが、読みながら筆者とボクシングをしているようで、読み終わった頃には灰になったような感覚に襲われます。なかなか女性から見た鋭い視線が満載です。

女性の視点で書かれた本としては、また鷲田先生の本とは別の側面が垣間見えるかと思います。哲学と言うよりはどちらかと言うと社会学に近いですので、ジェンダーなどに興味がある方にお薦めです。

 

最後にご参考までに映画を一本ご紹介します。

ファッションが教えてくれること

ファッション誌Vogueの編集長のドキュメンタリーです。「プラダを来た悪魔」のモデルになった人です。

ファッション業界に君臨する女帝のお話ですが、リアルで極めて面白い!!是非ファッション、流行の舞台裏をお楽しみください!