女性には、「私はこういう風に生きていきたいけれど、それって男性はどう思うんだろう?」と考える瞬間があります。
世の中は女性が活躍できる環境づくりを目指す雰囲気がありますが、実際のところ男性はそれをどのように感じていて、結婚後の家事や働き方などはどのような工夫をしているのでしょうか。
「この職業・働き方だからこのライフスタイル」という風に、仕事とライフスタイルには連動性がありますので、今回は、ご自身は実業家、奥様は勤務医という共働き家庭を築いている金子輝幸さんにこれらのお話を伺ってきました!
金子さんの現在の仕事・活動
・株式会社ネクスト・アカデミー 代表取締役 |
職業は「上級管理職フリーランス」
色々な会社の役員レベルのポジションで働くことが多いご自身を、金子さんは「上級管理職フリーランス」と表現します。
この上級管理職の立場で、マーケティング、組織づくり、IT企画に携わり、企業からの相談に乗ることも。その他、上級管理職とは異なる仕事もされていて、「東京大学 EDGEプログラム・メンター」がその一つです。
これは、世界で勝てる起業家を輩出するためのプログラムで、アイディアを生み出す「創造性」と、生まれたアイディアを実現する「起業家精神」を培うものです。(※参考URL http://edgeprogram.jp/university/u-tokyo/)
このプログラムには「メンター」と呼ばれる外部の専門家がついており、先生と生徒の両方がメンターから専門的なアドバイスをもらえる仕組みになっています。金子さんは、主にIT分野の新規事業を担当するメンターなのです。
「インターネット」と「教育」の融合に可能性を感じ、株式会社ネクスト・アカデミーを創業
「インターネット業界は、音楽・ゲーム・本・マンガなど、自分の好きなこと全部を仕事にできる分野だと思ったので興味を持った」という金子さん。インターネットは人を活かしも殺しもするツールだと感じる中、インターネットの効果を最大化する方法を考えるようになっていた彼が、ピンときたのが教育分野でした。
この分野にインターネットを活用すれば、カーンアカデミーのように、時間や空間を超えて世界中に無償で高水準の教育を提供するサービスと、社会システムにおける「教育」のあり方を変革するサービスの2つを提供することができるのではないかと考え、その実現のために設立したのが、株式会社ネクスト・アカデミーです。
同社が手掛けるこのwebメディア ‘BIRDY’は、「遊ぶように学び、遊ぶように働く」ことを目指すサイト構成になっています。
結婚生活について
・結婚時期 2012年4月 ・家族構成 奥様、お子様1人(2016年3月時点:11ヶ月) ・奥様について 勤務医で、手術も担当/現在は、出勤日数と夜勤を減らして勤務(勤務時間は通常時間) |
家事や子育ては分担して、工夫しながらやりくり
「妻の職場に託児所があるので、子供の送り迎えは基本的には妻がしていますが、妻の帰りが遅くなってしまう場合や子どもの風邪など緊急の場合には、僕が行くこともあります。また、時間を確保して、妻と子供の帰宅前に夕飯の準備や洗濯をするなどしています。子供のご飯と寝かしつけ、お風呂は妻と分担。初めから一緒にやっていました。」(金子さん)
お子様が生まれる前は、仕事で奥様の帰りが遅いことが多かったため、夕飯は金子さんが作る日が多かったそうです。
徐々に家事は工夫をするようになり、途中から食器洗い機と洗濯乾燥機が登場。食事の買い出しもネット・スーパーの利用が増えてきました。
両親が共働きだった金子さんは、もともと女性が働くことに対する理解がありました。大学時代にはなんと、日本の雇用システムに関する研究を行っていたのだとか。そのため、若い頃から女性が働くことに対する考えを深く持っていました。
家事や育児への参加において、自分に点数をつけるとしたら60点
「理由は、僕の基本的な家事技術力の低さ!料理歴も3年くらいと浅く、お皿洗いも、妻から指摘されることもあります。(笑)」(金子さん)
では、奥様からは何点もらえそうか聞いてみたところ、
「夫としてや日常の所作については40点。父親としては80点くらいですね。自分の貢献度を考慮した点数づけです。寝ている間に子供が泣いても、僕は起きないので。(笑)子供→妻→僕という位置で寝ているので、子供の隣で気を張っているであろう妻が寝不足にならないように、朝5時くらいに寝る位置を交代しています。といっても、月1回あるかないかです。(笑)」(金子さん)
理想通りの平和な毎日
「一人一人が自分の人生をきちんと歩んでいて、その上でチームワークがある夫婦が理想でした。今、それが実現できています。30代での結婚だったので、経済的に比較的余裕があり、東京に住んでいないため家賃等の生活費も安く、派手な遊びをしない僕には、理想通りです。20代の頃に努力してきて良かったと思っています。妻の機嫌がいつも良いこと、もっと言うと、妻が幸せかどうかが、自分の幸せのバロメーターだと思っています。お互いに事故も大きな病気もなく、非常に恵まれた状況です。」(金子さん)
気を遣って黒くなっている熟れたバナナを優先的に食べたら、それは奥様がお子様用にわざと残していたもので注意されたことがあるという平和なエピソードも。ケンカとは呼ばない「ボヤ」はたまにあるそうです。
お互いのキャリアプランに関する話し合いは結婚前から
お互いがすでに働いていて、それぞれが自分なりの仕事観を持っていたので、それぞれのキャリアプランについては結婚前に話し合っていたそう。
奥様はずっと働きたいと考えていた方で、金子さんも、妻になる人にはずっと働いていてほしいし自立していてほしいと考えていました。働いているお母様を見て育ったこともあって、「女性は家にいるもの」だとは思っていなかったと話します。
女性が人生を選択できるように、20代の頃から準備
「僕は、20代の頃から、いずれ結婚することを考えて、時間の自由がきく働き方ができるように準備をしていました。男性は、まだ結婚相手がいないとしても、20代のうちから、結婚生活に向けてきちんと準備をしましょう!僕は、女性が人生を選択できるような状態をつくろうと思っていました。女性が働きたいと思ったら自分がそのための支援をしなくちゃいけないし、女性が働かないという選択をする場合には、経済的な部分を僕が担い、女性は男性を支援する必要が出てきます。その場合には、経済的なことを考えて、余った時間で僕の仕事を手伝ってもらおうとも思っていました。女性がどの選択をしてもこのトレードオフができるように準備をしてきました。」(金子さん)
働く女性から離婚を切り出すケースが増えてきている。今後は企業と男性の理解が鍵を握ると思う。
世の中は、女性が活躍できる環境をつくろうとしていますが、これについてどのように感じていらっしゃるか伺いました。
「日本全体ではなくあくまで「東京」という限定的な地域での話(東京勤務・核家族・共働きというケース)で思っていることがあります。
女性にとって、結婚・家庭とキャリアとの両立は、肉体的にきついだろうなと思います。子供が生まれた後も女性が仕事を続けている東京の夫婦の話を聞く機会が多いのですが、仕事で男性の帰りが遅いなど、東京の一般的な働き方では女性に負担がいきがちなことから、女性から離婚を切り出すケースが増えてきているという話を耳にしました。
女性の視点で見ると、子供と夫、両方の面倒を見ながら、経済的にも自立するとなると、一人分の負担を減らす(苦笑)選択は極めて合理的な判断なのではないでしょうか。男性側の自分としては、冷や汗ものです。そして、男性が30代でこのことに気づいても状況の打開が難しいことが多いと思います。
ただ、僕のまわりの友人(男性)では、非常にパートナーを大事にしている方が多く、ケースバイケースだなと思っています。
自宅作業OKの日を設けて、男性と女性の両方が、結婚・子育てと仕事を両立しやすい仕組みを用意している企業も出てきているので、東京ではこれからさらにそういった動きが広がっていくんだろうと期待しています。」(金子さん)
独身女性にアドバイスをするとしたら
「独身女性に対して何かアドバイスはありますか?」と伺ったところ、リアルなご意見を頂戴しました。
「僕を知る友人には、『お前がそんなこと言えるか!』と突っ込まれそうですが・・・
結婚後に結婚相手に合わせた人生を歩んでいる女性が今まで普通だったと思いますが、これからは、「女性の仕事や人生に対してどういった考えを持っている男性と一緒に生きていきたいのか」を考慮した男性選びをしていったら良いのではないでしょうか。お互いが人生を妥協しながら一緒にいるのではなく、二人とも自分の人生をきちんと選択しながら一緒にいることが大事だと思います。」(金子さん)
夫として・父としての今後
「今は子育てでいっぱいいっぱいですが、子供にとって良い父親、かっこいい大人でありつづけたいです。」と笑顔で語る金子さん。
そして、「自分が、世に出るような事業・産業をつくることができれば、経済的にさらに余裕ができますし、家庭生活にかけられる時間も増えていくと思っているので、仕事も結婚生活も両方うまくいかせたいです。自分みたいな男性が活躍して、一つのモデルになれれば、窮屈じゃない世の中になるのではないかと思っています。」(金子さん)
この連載タイトルを決める時、「家族を大切にしている男性にインタビュー」という表現を入れるのはどうかと相談した私に、「家族を大切にするのは当たり前すぎて・・・」と、さらっと素敵な切り返しをした金子さん。
翼を小さくたたむことなく、それぞれが自分らしく羽ばたき、お互いの人生を応援できる自立した関係を築いている金子さん夫妻の穏やかな日々は、きっとこれからも、長く、永く、続いていくことでしょう。