仕事も結婚生活も!女性のキャリアについて考えるシリーズ、第一回に続き、第二回は、 楽しんで働いている女性にインタビュー ~ 仕事は常に人づてで獲得。転職は事前履歴書なし。現在はフリーで働く木下紫乃さん ~ をお届けします。
まずは色々な働き方や人生を皆さんに知っていただきたい!ということで、この女性をご紹介させてください。
過去の転職も、フリーランスとして働く今も、彼女に仕事を運んできてくれるのは「人」。結婚はなんと3回。 まさに「仕事も結婚生活も!」というこの連載にぴったりな人生を送る木下紫乃さんの、仕事に関する「現在」「過去」「未来」と、プライベートについてお話を伺ってきました。
現在
仕事を得る魔法の言葉「ブラブラしてます。」
「『ブラブラしてます』と人に言うと、プロジェクトベースで仕事の声をかけていただける」という紫乃さん。決して暇ではないはずの紫乃さんですが、時間は掘り出せばあるし、自分というパーツを色んな人にどんどん使ってほしいと考えているため、「最近何してるの?」と聞かれたら「ブラブラしてます。」と言うのだそう。担当する案件のフィーは1案件あたり5~15万円程度で、こういった仕事を複数引き受け、空いた時間ではまだお金にならないプロジェクトに参加したりしながら働いていらっしゃいます。
「これまでそれなりに働いてきて、かつ、ちょっと時間がある大人が世の中に少ない、もしくは、いるのかもしれないけれど出会わないから、こうしてたまたま仕事が見つかったのではないかと感じている。不安定な働き方だとは思っているけれど、これまでずっと会社員として働いてきたから、会社に属さずにどこまでやっていけるか実験している。理系であれば専門分野があるので自分にできるのは『これです』というものが明確にあるけれど、文系ゼネラリストの自分に何ができるかを追求している。」(紫乃さん)
すぐにうまくいかなくてもOK
紫乃さんの仕事選びの軸は、面白そうか、面白そうな人がいるか、そして、自分の力で貢献できるか。「今の働き方がうまくいかなくなったら会社員に戻ったって良い。全てを完璧にする必要はなく、仕事人生の中で自分が大切にしたいものの優先順位がわかってさえいれば、捨てるものと得たいものが見えてくるはず。」と話してくれました。
今の働き方で得ているもの
「自分の信念に基づいたやりたい仕事だけをやれていて、一緒に働きたい人とだけ働けるからストレスフリー。今すぐにはお金にならない活動もあるけれど、1年後にお金になるかもしれないし、10年後にお金になるかもしれない。半分くらいはお金にならないものもあるのかもしれないけれど、それでも問題はない。報酬はお金だけじゃない。人とつながれることが大きな報酬。」(紫乃さん)
人に会うことの大切さ
旅が大好きで、普段から人と会うことも大好きな紫乃さん。「人と会うことも旅のひとつなんだよね。」と言います。人と話すことで自分と人の違いに気づいたり、自分では当たり前だと思っていた自分の特性が実は社会に還元できるものだと気づいたりすることがあるので、人と会うことを通して自分を知っていくことがあるのだそうです。
過去
独立前のOLのお仕事について
「面白かった。」(紫乃さん)
ではなぜその面白い仕事を手放そうと思ったのか。
「OLとして最後に働いていた企業では、大企業向けに次世代のリーダーを育成するプログラムを設計していたのだけれど、最後の3年くらいは、これに対する限界みたいなものを感じて、今までのものの見方や考え方を変えなければいけないのではないかと思うようになった。 安定した企業にいる人は視野が狭く、恵まれているが故に外の世界を知らない。 それなのに、自分が提供しているコンテンツは、そういった方たちの視野を広げるものになっていなかった。これからの企業のリーダーは社会全体を見ていかないといけないのに。
この頃、もっと世界を広げたくて、プライベートな時間にNPO法人での活動も手伝っていて、そこで、理念で人が繋がっているのを見てきた。また、そこで経験した多様性の中での軋轢や、そこで学んだコミュニケーションの取り方などを活かして、大企業の人が他社やNPOと協働する新しいタイプのリーダー育成プログラムを会社に提案したが、社内外から『その必要性はない』と言われてしまった。自分の提案力がなかったのだと思うけれど、クライアントも大きな冒険をしたがらないことを感じ、ますます仕事に物足りなさを感じるようになった。」と話します。
そんな時にある人に出会い、慶応大学大学院メディアデザイン研究科の存在を知ります。ここでは、これからの新しい課題解決を、デザイン、テクノロジーや、マネジメント、政策という4つの面から学ぶことができるのだと言う。聞けば聞くほど面白そうに感じ、受験して、見事合格しました。
でも、会社側は大学院に行くことに難色を示しました。「人を育てるための会社なのに、自社の社員が学ぶことに難色を示したことに対して失望してしまい、『これが今の世の中の現実なのかな』とも感じ、退職した。」(紫乃さん)
未来
履歴書を出さない(後から出す)転職が広まっていったら良いと思う
「その人の『信頼性』を基に人づてに転職できる働き方や、自分をわかってくれる人、信念を同じくする人と働く働き方がもっと広がっていって、もっとみんなが履歴書を出さなくてもいい転職ができるようになったらいいなと思っている。その人の学歴やキャリアやスペック云々を企業が知る前に、人同士が出会い、繋がっていて、その中で一緒に働いてみたいと思ってもらって誘いを受けて、履歴書は後から出すような感じで仕事を得ていく方が幸せなのではないか。
例えば企業に勤めていても、『何かこの会社違う』『このやり方じゃない』と考え、会社を辞めたいと思った時に、次の仕事が見つかるまで3ヶ月くらい一緒に仕事ができる知り合いが一人でもいたら、それが気持ちのセーフティーネットになるし、本当に会社を辞めたければ辞めることができる。一番よくないのは『他に行くところがないから我慢してイヤイヤ仕事をしている状態』だと思う。雇用側にも雇用される側にもメリットがない。そのためには定期的に新しい人や事柄に触れて、信頼で結ばれる人間関係をつくり、自分自身の視野を広げる努力をしていくことが大切だと思う。」(紫乃さん)
一般応募による転職ですと、そこが実際はどんな会社なのか、どんな人がいるのかわからない状態で飛び込んで、その環境に合わせながら、周囲の人に自分は何が得意で何が苦手なのかをわかってもらう必要があります。なかなか大変なことですよね。紫乃さんが経験してきた人づての「履歴書を後で出す転職」なら、事前に会社側が自分のことをわかってくれていて、自分も会社に意見を言いやすい。お互いに対等でミスマッチも起きにくいというメリットがあり、とても共感します。
今後の野望は「想像がつかない人生」
「3年ごとぐらいでガラッと流れを変えるような、予想のつかない人生を送りたい。誰かの評価なんてどうでもよくて、自分が満足する人生にしたい。」と話してくれました。
プライベート
日々色々な人と食事をしていて、よく家を空けている紫乃さんの旦那様って?
旦那様は、ビッグデータの分析などを行う会社員。過去に起業経験があり、紫乃さんが(OLとしてではなく)安定的に稼げるようになったら起業したいと考えていらっしゃいます。「だから、家での挨拶は『稼げてる?』って(笑)。」(紫乃さん)
働き方にもライフスタイルにも全く干渉はなく、どこにいるのか、何時に帰ってくるのかなどは全く聞かれないそう。「関係が劣化しないための秘訣は、会話。と同時に、お互いに会いすぎないようにしていて、お互いのペースを観察している。お互いが精神的に自立しているこの関係を心地良いと思っている。」
時間帯が合わない二人。先に寝る場合には置き手紙を書いてから寝るのか聞いてみたところ、「もちろん書かない!(笑)時々メールでやりとりすることもある。他者と比べてこうでなければならないというものがお互いにないので、お互いがHappyなら良いんじゃないかと思う。」との回答でした!
取材を終えて
ひまわりみたいな女性。たぶん、冬にお会いしてもそう感じるのではないでしょうか。旦那さんからは「煽り屋」と言われるらしいです。わかる…。「失敗したって良いから自由に生きていきたい」というスタンスにとても共感しました。履歴書を後から出す転職は私にも経験がありますが、予め自分を理解してくれている人と働くことができるのは幸せです。
旦那様とはお互いがお互いをよく観察している仲だという紫乃さん。「好き」の反対は、「嫌い」じゃなくて「無関心」。愛情を持って行う「観察」は、「見守っている」という感覚に近いのかもしれません。
木下紫乃さんプロフィール
現在の仕事
チーム・ゼロイチ CWO(Chief Women Officer) 企業内起業家を輩出するイノベーション学習コミュニティにて、女性参加者を増やすためのサポート
昭和女子大学キャリアカレッジ 社会人女性向けのビジネススクール設計運営のサポート 週3日
Clipニホンバシ チームデザイナー コワーキングスペースで生まれる社外チームのチームビルディングをサポート
複数の小規模企業のサポート 3~6ヶ月スパンのプロジェクトベースで、主に教育や研修関連事業をサポート
NPO法人ブラストビート 中高生がチームで音楽イベントを開催するプログラム 社会人メンター
職歴&結婚歴
1社目 情報サービス 情報システム部→社外広報部/1回目の結婚
2社目 IT系コンサルティング・ファーム(※知人の紹介で入社)/2回目の結婚
海外生活 当時の旦那様の仕事の都合でドイツへ移住。その後、スウェーデンで暮らしも経験
(帰国)
3社目 広告代理店の子会社(※知人の紹介で入社) 現在の旦那様に出会い、3回目の結婚
4社目 教育研修会社(※知人の紹介で入社) 当初は営業アシスタントとして就業。大企業向けに研修の設計を行ったり講師を探したりと、研修をプロデュースする仕事を経験。後半7年程度はマネージャーを経験。7~8名のチームをまとめる。
大学院へ 慶応大学大学院メディアデザイン研究科にて学ぶ
現在 パラレルキャリアで様々な活動を行っている(詳細は上記参照)